日野家と遠見家の大事な大事な孫娘


○主題
 さて、日野、という姓には、その字からも太陽の属性があります。
 それは字面だけでなく、本編中で彼らがもたらしたことからして、明らかです。
 その点を踏まえて幾つか話をしていこうと思います。
 とりとめがないのは、もともとは前記事(http://shaper114.blog.jp/archives/8483020.html)の一部でしたが、そのまとまりを壊してしまうと思ったので、こちらに分割しました。でもまあ傍論オブ暴論という意味では同じです。 
 平にご容赦を。いつも通りのテキトー与太話です。

○遠見弓子という“月の女神”
 
日野家について述べる前に、 前記事(http://shaper114.blog.jp/archives/8483020.html)において、遠見家の三人はゴルゴン三姉妹と対応関係にある、という話をしました。こじつけですね。
 でもそこから始めたいと思います。
 いかに日野家が太陽的なのか、という視点は、以下からの対比によって得られたものですから。 

 さて、ステンノーにしろエウリュアレにしろ、もともとは月の女神の呼び名であったといいます。となると、特に対応してくるといえば、弓子のほうになります。月と弓には共通して“弦”があり、同じく曲線(アーチ)を描いているもの、であることなどから、弓というのは、象徴的には月と強い関連性がありますね。また、末妹メドゥーサが死せるものであるのに対して、姉であるステンノーとエウリュアレは不老不死であったといいます。千鶴が不老である、というのは事実ではなく印象にすぎませんが、エウリュアレと強い相関性を持つ弓子が一度は蘇った事実は、ひとつ気に留めとくと面白いかもしれません。
「蒼穹のファフナー」において、死を克服するということの象徴性。


月の光が朝にほどけていくように、しずかにいなくなった弓子

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 弓子が「月の女」なら、逆位置に対応するのは「太陽の男」です。そう、日野道生です。

 事実として、弓子の登場人物としての魅力は、道生との再会を期に、大きく高まっていくことになります。気のいい美人先生、という役割から一歩動いて、一人の人間として、葛藤し、涙し、また希望を抱く――。そんなエネルギーを、道生から受け取っていたように思います。
 それは美羽を産んだことで母としての愚かさ、逞しさを手に入れていくこととも同心円を描いて、遠見弓子/日野弓子をより血肉の通った存在へと変えていきました。
 道生もまた、弓子との再会によって、生来の朗らかさだけでなく、未来への不安も同時に表現するようになり、より魅力的な人物となっていきました。二人の間には、良いフィードバック関係があったと思います。
 次は、彼女をより輝かせた日野道生について触れていきたいと思います。

○日野道生=太陽(=奇跡たる「相反するものの結合 Solve et Coagula」)をもたらすもの 
 遠見家に縁深い人間である日野道生について。
 道生が搭乗していた機体の名は「メガセリオン」と「マークアイン」でした。
 前者のメガセリオンとは、ヨハネの黙示録の“大いなる獣”を意味し、また魔術的にはマスターセリオンこと、偉大なる魔術師アレイスター・クロウリーに通じる言葉であります。魔術の指導者としても有名な人物です。彼によれば、セリオンとは太陽を象徴する神格であるとのこと。つまり太陽と関連付けられます。
17話。太陽のように上昇し、ミサイル撃墜に向うメガセリオン


 マークアインはノートゥングモデル第“”番機でしたが、1はタロットカードにおいては“魔術師”です。魔術師は理性と感性の両方を用いて、奇跡を体現することを試みる者のことです。
23話。太陽のように輝く気化爆弾を炸裂させるマークアインは、マークニヒトの撃破という至上命題に挑む



 そういえば、道生は意外と料理上手なところが無印19話で表現されていましたが、魔術・錬金術の根源は料理にあるという説があります。ここにも正しい相関性が見られると言えるでしょう。太陽を目指した魔術師アレイスター・クロウリーとの同然、といいますか。まあここらへんの同然は、本編とはほとんど関係ないと思います。与太話の与太話たる所以ですね!
 道生は昔から「昔は臆病で情けなくって、目立ちたがり屋で女好きのろくでなしだったわ!」と、おもしろキャラというか、ムードメーカー的なところがあったようであります。
 昔話はともかくとして、島に帰ってきてからの日野道生は、子供たちのいい兄貴分として、また歴戦の兵士としての峻厳さを発揮し、つまり太陽のような朗らかさと厳しさを併存するムードメーカーとして、年若いパイロットたちを“導いて”いきました。日の光が道を指し示すように。

 以上のことから、メガセリオンとマークアインどちらの機体においても、また彼個人のパーソナリティにおいても、異なる物事の止揚=奇跡を試みるもの=太陽のように輝き・導くもの、という象徴を持ちます。
 メガセリオンに乗って長らく英雄的戦闘を続けていた点、島への攻撃をほぼ単独で阻止したことは、奇跡の実現といっても過言ではありません。マークニヒトをただの人間でありながら撤退にまで追い込む契機となったことも、彼の太陽性(奇跡をもたらす性質)に拍車をかけるエピソードだと思われます。
 太陽は十二の宮をめぐりますが、十二という数字は道生を除いたノートゥングモデルのパイロットの総数とも一致しますね。皆にとって先世代である道生が“太陽”であること、皆の生存の恩恵の基礎となったことは、この点からも補強される考え方だと思います。
 彼なくしては、一騎達が戦いを続けられることはなかったでしょう。

道生と弓子の結婚の象徴性 

 “日野道生(“太陽/が通る黄道”)”と“遠見弓子(月)”が婚姻したところに、“日野美羽(太陽・の翼=星に射す日光の恵みの意、と捉えれる)”が生まれました。これを、また、錬金術的に言うところの大いなる存在を結実させる力が働いたことなどと話してみるのもおもしろいかもしれません。
 錬金術――その末裔である科学――というものは、異なるものを両立させることで奇跡を手に入れること、を目的としてきました。また、その哲学も「相反するものの結合(Solve et Coagula)」をモットーとしたと言われています。ワルキューレの岩戸にも刻まれていた言葉として有名ですね。
 男と女・太陽と月・陰と陽・平和と戦争・存在と無……あらゆる対比されるものを、止揚し合一させる術を、錬金術師たちは求めた。もっともそれは、科学者であろうと、恋人たちであろうと同じことです。道生と弓子も、同化ではない合流の幸福を求めて、戦い、そして生き延びようとした。それだけの話、です。

 道生は長らく弓子との写真を“肌身離さず”にいました。それは、島を出た後の彼の命と理性を支えるものでした。
 が、それが身体から離れたときに、死を迎えることになりました。
 これを、女の写真男の身体という相反するものをひとめとめにする=合一化によって道生に付与されていた「完全性(不死性)」の喪失と見做すこともできると思います。つらい。

○賢者の石たる日野美羽
 さて、あえて象徴的なこと言うならば、竜宮島の科学者(アルケミスト)たちが、ついに得ることが出来た大いなるもの――それが日野美羽だった。というところでしょうが、それが事実であろうとなかろうと、遠見千鶴たちこそが厭う答えではあると思います。ただ示唆的でもありますので、仮定を続けたいと思います。
 道生と弓子の婚姻の象徴性から、美羽を『「相反するものの結合(Solve et Coagula)」「知識(エスペラント)」を司るもの――“賢者の石”』のような存在、と解釈することも可能ではあります。賢者の石は、性質的には「水銀/貴金属」と「硫黄/卑金属」などの合成物――異なる性質を併存する柔軟な物性を持つ不思議な石だと言われています。彼女の生命の柔軟性も、こことつながっているように思います。
たった数年で何倍もの速さで成長する美羽
ミールの導きに従って、たやすく成長する美羽

 また、賢者の石は癒やし・不老不死をもたらす薬でもあります。
 美羽が望んだから弓子は蘇った、というところを直接的に受け止めれば、こういった働きが象徴的には背後にあったと想像することも、まあ可能でしょう。
 前記事において、美羽が真矢のヒーリングに寄与した、というのも、こういった観点から整理することもできます。
 この意味では、美羽にもまた遠見家代々のヒーリング性が重なっているのは、明らかですね。

 彼女が何をもたらしたのか、については前記事(『マークゴルゴはいなくなった』 http://shaper114.blog.jp/archives/8483020.html)にて触れておりますので、よければ。

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○真に「相反するものの結合(Solve et Coagula) 」を司った科学者・日野洋治
 同じく日野の姓を持つキーパーソン、父・日野洋治について。
 その姓名(生命)は、太陽(日野)海(洋)混合なので、やはり彼にも“相反するものの結合(Solve et Coagula) ”を達成するだけの属性があると思います。
 マークザインという、人の文明とフェストゥムの力の混合を生み出すだけのことはあったと言えるでしょう。

最期は、太陽の燦然のごとき光の中に消えていきました。



○日野 恵
 結果的には、日野家の中で最初になくなってしまった日野母さんですね。
 RIGHT OF LEFTでの厳しい教官姿、ファフナー第一話で蔵前果林を励ます姿などが印象的な女性でした。
 そういった両面性は、息子・道生と共通するものがあると思います。
 厳しくも、やさしい。それは太陽の性質にほかなりません。名は体を表すといいますが、まさみ“恵み”たる人でした

陽が沈むようにして、ワームスフィアに消えていく恵さん

 ところで恵さん、小説版準拠になったシリウス版ファフナーだとバーンツヴェックに乗ってなかったので、もしかしたら再登場もありえるかもしれませんね。


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 日野家特有の、厳しさと優しさを両立させたところは、一家に共通した様子ですね。道生が両親を振り返ったシーンなどから、決して仲は悪くなかったようですし。それだけに、洋治が道生を連れて家を出た、というところに、深いエピソードが眠っていそうなところです。もはや聞くことは叶わなくなってしまいましたけれど……。しかしその性質・属性は、確かなものとして美羽に受け継がれることでしょう。あれで苛烈な女になったらちょっと道生さん泣くと思いますが。
 それにしても弓子、中々どうして日野の女っぽいというか、激しさと母性の両立は出来ていましたね。どこまで折り込み済みの性格設定と演技だったんでしょ。昔から日野家に出入りとかしてたのかしら。
 恵さんに料理を教わる弓子……いいね! 




 さて、こんなところで。ではでは。